IASS'94 Proceedings
Spatial, Lattice and Tension Structures
Atlanta, Georgia, USA, April 24-28
One Volume
本ホームページは,シェルと空間構造に関する最近の論文集から,
適宜選ばれた海外の論文の抄録を紹介するものです。
論文は抄録者の意志により随意に選ばれたものであり,
必ずしも各論文集を代表する内容のものとは限りません。
Topology Optimization of Plate and Shell Structures |
板とシェルの位相決定解析 |
K.Maute and E.Ramm | pp. 946-955 |
Structural Failure and Quality Assurance of Space Frames |
スペースフレームの構造破壊と品質保証 |
Tien T. Lan | pp. 123-132 |
The Behaviour and Design of Stressed-Arc (Starch) Frame |
初期応力をもつアーチ(スターチ)の挙動と設計 |
Murray J. Clarke(1) and Gregory J. Hancock(2) | pp. 200-209 |
Georgia Dome Cable Roof Construction Techniques |
ジョージアドームケーブル屋根施工技術 |
Wesley R. Terry | pp. 563-572 |
原題:Topology Optimization of Plate
and Shell Structures
訳題:板とシェルの位相決定解析
著者: K.Maute and E.Ramm
著者所属:Institut fur Baustatik, University of Stuttgart
雑誌名:Spatial, Lattice and Tension
Structures, Proceedings of IASS-ASCE International
Symposium 1994, pp. 946-955
図10,表0
用語:
原語:Sizing problems, Shape optimization, Topology optimization,
Optimality criteria methods (OC), Mathematical programing(MP),
Geometrical description, Material description
日本語:寸法決定問題、形状決定問題、位相決定問題、
最適性基準法、数学的最適化手法、幾何学的表現、物質的表現
内容要旨:
概要
等方性材料の密度分布を変数とし、均質化法
の厳密性を緩和させて定式化する。線形有限要素法
及び、数学的最適化手法を適用して種々の拘束
条件、目的関数に対応することができる。
はじめに
最適化手法には寸法決定問題、形状決定問題、
位相決定問題の3系統がある。
物質的表現による位相決定
物質的表現による位相決定解析の代表は均質
化法であるが、変数が多い為、適用できる問題
が限られてくる。本法では、各要素を密度の変
化する等方性材料とみなすことで、変数の数を
通常の均質化法の約3分の1に低減した。
数値解析例
変位
制限を設けた冊状の板の数値解析では、約6
5%の重量が低減された。膜屋根のスチフナー
の補強骨組の位相決定では、重量一定の下で剛
性が97%改善された。中央に集中荷重を受け
る正方形板から出発した位相決定では2つ穴の
開いた構造が得られた。外形はベジエスプライ
ンによる幾何学的表現の併用を試み、滑らかな
形状を得ることが出来た。
まとめ
本法は通常の均質化法より簡便だが、中途半
端な密度を有する要素部分が出現し、はっきり
したレイアウトが得られにくいという欠点があ
ることが分かった。
(平成6年7月14日 川口健一 抄録)
原題:Structural Failure and Quality Assurance of Space Frames
訳題:スペースフレームの構造破壊と品質保証
著者:Tien T. Lan
著者所属:Institute of Building Structures, Chinese Academy of Building Research, P.O. Box 752, Beijing 100013, China
出典:Spacial Lattice and Tension Structures, Proc. International Symposium '94 of IASS, pp. 123-132
概要:
■概要
大空間を覆うスペースフレームを用いた構造物は、高度な技術を要し、イベントなどの公共性の強い建築物として用いられるため、品質管理が非常に重要となる。本論分は中国におけるスペースフレームの具体的な事故例およびスペースフレームの品質保証(規格)を著したものである。
■事故例
具体的な事故物件例4件について構造上の特性、崩壊の状況、その原因に関して述べている。崩壊もしくは損傷を受けた例として、
1.山西省太原(タイユワン)コミュニケーションセンターの会議室
2.北京のカーペット制作工場(Fig.3)
3.新彊自治区烏恰(ウーチア)の劇場(Fig.4)
4.広東省深圸の国際展示場
が挙げられている。これらの事故の原因は、
1.設計ミスと溶接施工の不良。
2.施工時の仮設支持材の省略とアンカーボルトの不十分な溶接
3.設計を上回る慣性力の作用。
4.排水経路の不良および排水溝の目詰まり。
によるものである。その他多くの事故についても一般的な原因を分析している。
■品質保証
以上の事故例より、スペースフレームの品質検査および品質管理は重要な課題である。中国ではスペースフレームの設計および確認、承認するまでの過程で品質を保証するため以下の規格が制定された。
JGJ 75-91 スチール製のスペースフレーム構造物に対する規格
JGJ 7-91 スペーストラスの設計および施工仕様
JGJ 78-91スペーストラスの品質の検査および評価に対する規格
がある。規格JGJ 78-91は特に品質管理の目的で編集されたものであり、品質制御に必要な事項だけでなく、検査の判定についての必要な事項ものべている。
また建設プロジェクトの品質保証を着手した全ての都市に、「品質検査局」が設置された。同局により全てのスペースフレームの品質の検査および評価が行われるだろう。
(1995年1月18日 清水建設(株)和泉研究室 瀧諭)
原題:The Behaviour and Design of Stressed-Arc (Starch) Frame
訳題:初期応力をもつアーチ(スターチ)の挙動と設計
著者:Murray J. Clarke(1) and Gregory J. Hancock(2)
著者所属:
(1) Lecturer, School of Civil and Mining Engineering, University of Sydney, N.S.W. 2006, Australia
(2) BHP Steel Professor of Steel Structures, School of Civil and Mining Engineering, University of Sydney, N.S.W. 2006, Australia
出典:Spacial Lattice and Tension Structures, Proc. International Symposium '94 of IASS, pp. 200-209
概要:
■概要
ポストテンション工法を利用してトラスアーチを施工する"Strarch"が商品化され、100m程度のスパンをもつものが、実際オーストラリアをはじめとし幾つか建設された。この初期応力をもつアーチ"Strarch"の上弦材の強度に関して、1988年〜1992年までシドニー大学で行われた一連の研究を総括したものが本論文であり、目的は簡潔で有効な設計手順を提案することである。
■施工方法と積載荷重下の上弦材のモデル化
アーチおよび施工の特徴は、図ー1(a)にあるように地組みされたトラスの下弦材にあるケーブルを引張り、一端を移動させることによってアーチ形状にするところにある(図ー1(b))。このとき下弦材はスライドジョイントにより縮むようになっており圧縮力が生じないように工夫されている。これにより上弦材は初期曲率(k0)が生じ、降伏する。
施工完了時、すなわち固定荷重による軸力と曲げモーメントにより曲率(曲げモーメント)の分布は図ー2(b)のようになる。これに積載荷重を加えると曲率分布は中央で大きく、端部で小さくなる(図ー2(d))が、曲げモーメント分布は中央・端部ともに大きくなる(図ー2(e))。以上の理由により、隣接する部材による拘束力を図ー2(c)図示されるように非線形の回転ばねでモデル化する。
■実験例
実験(1988、1991)の装置および試験対は図ー3のとおりである。この結果3種類の細長比に関して、初期曲率に対する部材強度の関係は図ー4のように得られた。図中にある解析(1991)結果とよく一致していることがわかる。
■結論
"Strarch"では、初期曲率、材料非線形、隣接する部材による拘束力を考慮しなければならず、上弦材の強度は従来の設計法では得られなかった。しかし著者らが行った一連の研究において上弦材の強度は初期曲率と幾何細長比(下式参照)を与えることによって定量化されると結論付けている。
(1995年7月17日 清水建設(株)和泉研究室 瀧諭)
原題:Georgia Dome Cable Roof Construction Techniques
訳題:ジョージアドームケーブル屋根施工技術
著者:Wesley R. Terry
著者所属:Principal Engineer, Birdair, Inc., 65 Lawrence Bell Drive, Amherst, NY 14221, United States of America
出典:Spacial Lattice and Tension Structures, Proc. International Symposium '94 of IASS, pp. 563-572
概要:
この論文は、アトランタオリンピックのメイン会場となるジョージアドームの屋根架構の施工技術について述べたものである。同ドームは240m×193mの長円形をした平面で、その屋根架構システムには、この屋根の設計者でもあるLevy氏によって名付けられた「Hypar Tensegrity Dome」が採用されている。なおTensegrityとはプレストレスの導入によって、架構全体の安定性と剛性を得るシステムである。
具体的にジョージアドームでのHypar Tensegrity Domeは、網状のケーブル、周方向ケーブル(3重の同心円状に配置)、斜めケーブル、スチール製のポスト、およびテンショントラスで架構され、仕上げ材として網状のケーブル間にテフロン加工されたガラス繊維製の膜パネルが用いられる。そして客席部の外壁上に52本の柱を立て、この上にあるRC製のリングビームに、屋根が据え付けられるようになっている。
屋根架構の施工手順は以下のとおりである。
1. 地上に配置した網状のケーブルとテンショントラスを、リングビーム上にある52台の水圧ジャッキを用いてリフトアップする。
2. 3重の周方向のうち、最外周の周方向ケーブルを地上に配置した後、空中に吊上げ、斜めケーブルを用いて網状のケーブルに吊るす。
3. 最外周のポストをクレーンで吊上げ上端を網状のケーブルに、下端を周方向ケーブルに溶接する。
4. ケーブルにプレストレスを導入しながら、2〜3の手順を外側の周から行う。
5. ケーブルとポストの架構およびプレストレスが完了すれば、114枚の膜パネルをはめ込んでいく。
以上の手順により、ドーム全体の施工の工期や建設コストに悪影響を及ぼすことなく、屋根架構が完了したことが報告されている。
(1996年3月13日 清水建設(株)和泉研究室 瀧諭)