IASS'95 Proceedings
Spatial Structures: Heritage, Present and Future
Milano, Italia, June 5-9
Two Volumes
本ホームページは,シェルと空間構造に関する最近の論文集から,
適宜選ばれた海外の論文の抄録を紹介するものです。
論文は抄録者の意志により随意に選ばれたものであり,
必ずしも各論文集を代表する内容のものとは限りません。
In Service Performance Control and Monitoring of the Torino Stadium Roof Structural System |
トリノスタジアム屋根構造の張力再調整 |
M.Majowiecki and F.Ossola | Vol.2, pp. 835-842 |
原題:In Service Performance
Control and Monitoring of the Torino Stadium Roof
Structural System
訳題:トリノスタジアム屋根構造の張力再調整
著者:M.Majowiecki(*) and F.Ossola(**)
著者所属:Dept.Civ.Eng., Univ. Bologna(*) and Univ. Torino(**)
雑誌名:Spatial Structures: Heritage, Present
and Future, Proceedings of IASS International
Symposium, Milano,1995, Vol.2, pp. 835-842
図6,表3
用語:
原語:
日本語:
1990年ワールドカップ・サッカーの為にケーブ ル構造として竣工したトリノスタジアム。この 屋根構造のバックステーアンカーケーブル張力 に生じた不整を補正する為,実験値,解析値に基 づき行った張力再調整の報告。
【経過】
1989年5月:建設時の張力導入。1992年5
月:建設後初の張力調整とテンションリングの長
さ補正。設計許容値より大きな張力のバラつき
の報告。1993年7月:本格的張力再調整の実施。
1993年8月:動的載荷による剛性評価,最終調整の
実施(ISMESによる)。
【長期荷重】
設備仕上げ材等を含めると設計時
は10%少なく見積もっていた。解析データを更新。
【張力】
1992年5月の測定で,安定化ケーブルの
初期張力レベルが設計値より平均で30%,最大値
で40ー50%程度異なっていることが分かった。
【原因推定】
温度分布の不均一,基礎の変形,
ケーブル長さの施工誤差,ケーブル材のクリー
プ,張力導入作業時の誤差,等が考えられる。
ローマ・オリンピックスタジアムでの経験と,測
定された形状変化の少なさから,温度差の激し
い日中の初期張力導入作業による張力導入作業
が原因と推定される。張力導入作業は他段階に
分けて行われる事が望ましいが,工期短縮の為
か,1度の作業で行われていたことも判明した。
【数値シミュレーション】
屋根材の負担を軽減
する為,隣接ケーブル間の変位を最小にするよう
な張力再導入手順を計算によりシミュレートし
た。
【測定とモニタリング】
張力再導入実施の前後,
動的載荷により構造の振動周期とモードを計測
した。張力再導入作業によって幾何学的な剛性
を高めることが出来た。
【まとめ】
張力レベルのバラつきや低下は構造
安全性よりも変形による使用上の問題を生じる。
ポンディング現象や風による振動も避ける必要
があり,ケーブル構造における張力管理は重要
である。
(平成7年11月17日 川口健一 抄録)