シェルと空間構造文献抄録

IASS'96 Proceedings


CONCEPTUAL DESIGN OF STRUCTURES
University of Stuttgart
Oct.7-11,1996, Stuttgart, Germany
Two Volumes


本ホームページは,シェルと空間構造に関する海外の最近の論文集から,
適宜選ばれた論文の抄録を紹介するものです。
論文は抄録者の意志により随意に選ばれたものであり,
必ずしも各論文集を代表する内容のものとは限りません。


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Freedom and Discipline in Design デザインにおける自由と規律
H.Isler Vol.1, pp.61-64
Conceptual Structure Design Applied to Interactive Optimization Models 概念的構造設計のインタラクティブな最適化モデルへの適用
M. Schafer, D. Hartmann Vol.1, pp.347-354
The Analytical and Numerical Generation
of Smooth Curves and Surfaces
平滑な曲線・曲面の解析的および数値的生成法
Ch.Williams, M.Barnes & E.Nsugbe Vol.1, pp.360-367
CRITICAL APPRAISAL OF THE COLLABORATION BETWEEN
ENGINEERS AND ARCHITECTS IN BRIDGE DESIGN
橋梁設計での構造家と建築家との協力関係における評価について
R.Walther Vol.1, pp.459-466
The Development of the First Shell Construction of
Reinforced Concrete
20世紀初等に最初のRCシェル構造が開発されるまで L.Schone Vol.2, pp.739-746
Conceptual Design of Cable-Stayed Systems ケーブル支持システムの概念的設計 Z.Agocs Vol.2, pp.799-805
CASE STUDIES IN THE DESIGN OF WIDE-SPAN EXPO STRUCTURES 博覧会における大スパン構造物の設計におけるケーススタディ M.Barnes, W.Renner, M.Kiefer Vol.2, pp.814-821
Aluminium Lattice Structure: Developments and Innovations
in Clear Span Roof Solutions
アルミニウムラチス構造:大屋根における開発と革新 A.Lopez & K.Troup Vol.2, pp.1074-1083
TENSIONED MEMBRANE DESIGN FOR A MARKET IN TIMISOARA,
ROMANIA
ルーマニア,チミソアラの市場における張力膜の設計 V.Gioncu, L.Tirca, H.Durr, R.Essrich Vol.2, pp1003-1011
CORRUGATED METAL SHEETS - UNNOTICED POSSIBILITIES コルゲート金属板の新しい使用法 A.Reichhart Vol.2, pp. 911-918
MEMBRANE COVERINGS. THE MAIN PRINCIPLES AND THE ANALYSIS OF REALISED CONSTRUCTIVE DECISIONS 金属膜屋根:基本原理と実施計画の分析 I.L.Roujanski Vol.2, pp. 1112-1119
Computer Aided Design and Manufacture of Membrane Structures 膜構造の計算機援用による設計と製造 S. Ganti, G. G. Schierle, M. Yin Vol.1, pp.230-231
The Importance of the Structural Concept in Bridge Design 橋梁デザインにおける構造計画の重要性について Christian Menn Vol.2 pp.653-662
STRUCTUAL CONCEPTS BY OPTIMIZATION 最適化による構造概念 K.-U. Bletzinger, K. Maute, E. Ramm Vol.1, pp. 169-177
SHAPING STRUCTURES FOR LEAST-WEIGHT 最小重量の形状構造物 W. Zalewski, St. Kus Vol.1, pp. 376-383
Membrane/Glazing Roofsystem-Integration in a General Building Design Concept 一般的な建築物設計概念における,膜とガラスルーフの統合システムについて M.Kiefer Vol.1


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原題:THE DEVELOPMENT OF THE FIRST SHELL CONSTRUCTION OF REINFORCED CONCRETE
IN THE BEGINNING OF 20TH CENTURY
訳題:20世紀初頭に最初のRCシェル構造が開発されるまで

著者: L.Schone
著者所属:Brandenburg Technical University of Cottbus, Germany
雑誌名:Conceptual Design of Structures Vol.2, Proceedings of IASS Int. Symp. Oct. 7-11, 1996, Stuttgart. pp. 739-746
図7,表0
用語:
原語:
日本語:

内容要旨:
はじめに
1922年, Dyckerhoff&Widmann社のMergler氏とCarl Zeiss社のWalter Bausfeld氏が出会ったことが、 いわゆる Zeiss-Dywidagシェルの開発の始まりであり、その後数年の間にLeipzigの市場やFrankfurtの発電所等を揺籃期とす る20世紀のシェル建築へと続いていった。しかし、シェル建築の革新は構造技術の連続的な発展に基づくもので はなかった。その重要な推進力は、既存の知識の再編と再構成であった。

19世紀と20世紀におけるシェル構造の考え方
Johann Wilhelm SchwedlerとAugust Fopplの空間構造
Schwedlerは多くのガスタンク設計の中で曲げ材を単層の部材にまとめてしまうことで、曲げ系の構造を膜応力 系の構造に変換した最初のエンジニアであったが、この構造は広まらなかった(1875頃)。Foppleは1892年、“立 体骨組み”という本を書き、Schwedlerのこの構造を理論的に扱った。そして三角形骨組み構造で、両端に剛なア ーチを持つ円筒を、さらにはRCで巨大な円筒屋根を建設可能なことを示唆した。Munich工科大学で実大実験を 行ったが、専門家の間では認められなかった。

初期のRCドーム
19世紀末には鉄筋コンクリートはドーム建築の構造材料として重要な地位を占めるようになるが、 RCドーム の設計上主要なモデルは、LyonやViennaのドームのように曲げ系のリブを用いた構造であった。
このリブ構造はMunichのArmee-Museum, DusseldorfのEvangelisches Vereinshausを経て1913年Breslauにスパン 65mのJahrhunderthalleが建設された。しかし、1911年、Sankt Blasienの教会のドームとして既にシェル構造が慎 重な設計の上、建設されていた(シェル部分のスパン15.4m)。

変化−1920年代のRCシェル構造
理論研究の状況
回転シェルの簡易な理論は1828年にLameとClapeyronによって与えられていたが、曲げ応力を知るには不十分 で、Loveの数学的な厳密解は実務には用いられなかった。GeckelerがZiess-Dywidagシェルの開発中に見つけた簡 略解は扱いやすさと一般性を兼ね備えていたため回転シェルのその後の発展を支え、Franz Dischingerがシェルの可 能性を探求するための道具を与えた。

美しさの基準
RCドームとシェル構造が登場したころは、形状決定は機能規定に従うという、エンジニアとアーキテクトの特別 な関係があった。エンジニアは力の分布に従い有効な部材配置を決めることにより構造表現を行った。この技術と 芸術の一致は構造エンジニアに多大な刺激を与えた。

最初のRCシェル−Zeiss-Dywidag-シェル
BauersfeldはMerglerの助言を得て、半球状の鋼棒ネットにコンクリートをかぶせることでスパン16m、厚さ3cm の滑らかな内表面を持つプラネタリウムを建設した。 BauersfeldはDyckerhoff&Widmann、Dischingerとチームを組 みこの構造の開発をさらに進めることにした。Torkret法による鋼棒のネットと速乾性のセメントでし曽・筝セ気ホ 精度、脱型時の力の問題を解決した。DischingerはRCをシェル構造に最適な材料と考えるようになりい気蕕砲理論 は有効な道具となっていた。Bauersfeldsの指示で、Geckelerは当時Dischingerが調べていたJenaのSchott&Gen.社の ための回転シェル(スパン40m、厚さ6cm)の境界部分の曲げ応力の近似を行い、境界付近の母線形状を調節するこ とで有効な境界形状を見つけた。このシェルの実現によりSchwedlerのドームが初めてRCとなった。
Fopplの業績はこの頃には完全に忘れられていたが、1926年にはDusseldorf, Gesoleiに6つの円筒シェル(最大スパ ン23x11.75m,厚さ5.5cm)が建設された。 円筒シェルの自由境界付近の力の流れを正確に把握するためにUlrich Finsterwalderが4人目のメンバーとして招かれた,海譴茲鷸eiss-Dywidagシェル工法が広まるようになった。

専門家の中への定着
1920年代後半にはシェル構造は徐々に受け入れられるようになり、Bauart KolbやH.Creamerによって折板構造の理 論も出版された。

まとめ
RCシェル構造の確立の歴史
19世紀末にはドームや円筒シェルは鉄骨造としては既に建設されていたが、RC構造はシェルとして用いるほど 使いこなされていなかった。1910年代はリブ構造が主に用いられ、この間にFopplの業績は忘れ去られていった。 1920年代にF.Dischingerが理論的進歩とモダニズムの流れを背景にRCをシェルに適した材料であることを再認 識し、RCシェルは専門家の中に受け入れられていった。Thomas S. Kuhnによれば、知識の確実な積み重ねよりも パラダイムの変化が進歩の基本的な推進力である。そして、社会的な要求がパラダイムの変化と専門家の見方の変 化をもたらす。最初のRCシェル構造の出現を考えることによって進歩というものの本質が見えてくる。

変化の主役
よりよい設計のためにエンジニアはどうあるべきであろうか。本論の例から学ぶとすれば、第一歩は彼らが建築論 議に積極的に加わることから始まった。彼らは建築の構造表現の進歩における責任を感じ、建築文化全体に関わる 自分たちの位置づけを感じていた。さらに基本理念の変化を導くのには、チームワークが欠かせなかった。
Dischingerにとって、Bauersfeldのアイディア、 Geckelerの理論、 Finsterwalderによるディテールの探求、何れも 欠くことはできなかった。

(平成8年11月13日 川口健一 抄録)

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原題:FREE DOMAND DISCIPLINE IN DESIGN
訳題:デザインにおける自由と規律
著者:H. Isler
著者所属:Ingenieur- und studienburo, Burgdorf, Switzerland
雑誌名:Conceptual Design of Structures Vol.1, Proceedings of IASS Int.Symp.Oct.7-11,1996,Stuttgart/Germany p.61-64
用語:
 原語:Design, Competition, Model
 日本語:デザイン、設計協議会、模型

内容要旨:
要約
この論文は、建築(構造)デザインにおける自由性と規律についての重要性について述べている。 また、設計コンペにおいての審査様式の問題について論じ、それらの協議で選択された建築物の質の低下について考察している。

1.建築の世界
構造技術者は、自然界の厳しい物理的条件のもとで計画および設計を進めなければなりません。 重力,風,雪,地震などの様々な、条件(外力)に対して慎重な、判断で取り組む必要があります。 そして構造技術者は、それらの外力に対して最もふさわしい骨組み(構造システム)を定義し現実のものとして構成することが使命です。 建築意匠には、そのような絶対的な条件はありません。 建築意匠の多くのイデオロギー(観念形態)は、1つのイデオロギーの応用によって計画し立証することは、良かれ悪かれどのようにも可能です。 異なる国民や地域,教育,感情や状況(風土的な)によってそれは様々です。

2. 解決へのアプローチ
解決への方法は、多くの方法が考えられます。 1つは、経験的に即座に解決することです。経験的に解決をすることは、検討をし理解することよりも有効です。 問題を解決する方法の段階として現実的な模型で検討することも検討のうえで重要です。 模型は、見ることで非現実的なことも一般的な構造物の挙動をとらえることが可能です。また三次元的に建築物の実際の納まりが見ることができます。したがって、公共事業団体や審査員に建築空間を理解するうえで、模型は有効な手段です。さらに、環境や景観や文化,歴史などの条件も考慮することで、最終的な解決へのアプローチがなされます。 良いデザイン(設計)は、表面的な装飾によらず単純明快な趣旨をもっているのです。

3. 審査員の評価
もしコンペの依頼人へ個人的に説明することができたならそれは、依頼人を納得させるには、そう難しくはないでしょう。 また、時には専門家やそうでは、ない人たちの審査員によって建築計画案の評価をされます。 審査員は誰なのでしょうか? その審査員はだれが選考するのでしょう? しばしば審査員の選出によっては、設計計画案の採用者を運命づけることにつながります。 そしてその審査員は、新しい案を受け入れることなく古典的な方針で選考し、柔軟な審査員が評価することはないのです。 審査の方法は何でしょうか? 個人的な感性や経験でしょうか? テーブルの上に乗った模型を見ること評価をするうえで地上にいる人が建築物の内部や外部をみたり、飛行機やヘリコプターなどに乗って遠く離れた位置から見るような感覚でみることができます。 図面では、建築計画案を表現することは、誤解を招くことがあります。 著者の経験では、パリの有名な国際コンペ "Opera de la Bastille"で、建築計画案を表現するために非常に莫大な、設計図面を書いたことがあるそうで、今も駅舎の設計協議会でコンピューターを用い簡単に見ることのできる図面を書いているそうです。

4. 建築物の低下
デザイン過程が、後で悪く評価されることもあります。
・設計者の想像力不足
・調和と感覚の不足
・依頼者の意見によって
・企業からの依頼により
・設計者に知らされない他の理由によって
これらの要因により良い設計をする組織でも評価の悪いことがあります。

5.質の低下
建築物が竣工すると建築家たちは、写真をとったり出版したりし、同類(類似)の建築を設計したりするものに指導をしたりしますが、設計者やデザイナーの予測していないところで、知られていないことがあります。 建築物を使用していくうえで以下のようなことがあります。
・変更
・追加
・増補
・建築物の増築
・色彩の変更
・広告物
・建築物の周囲変化
・内装の変更
以上の実用的な様々な要因で建築物は、まったく異なったものへと変わってしまいます。 少なくとも、最初の状態のままで維持することが、建築物の質を保つ最良条件であると考えられます。

6.自由と規律
建築物には、デザインにおける想像を絶する自由性があります。 そして、現代ではそのほとんどが、技術的および経済的に実現することが可能です。 したがって、設計としての新しい分野への想像力を活発的に実現することを目指し、どんな必修条件があろうとも私たち設計者は、常に最良の設計案を心がけ設計していくことが大切です。

(平成8年11月13日 岡村和臣 抄録)

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原題:Conceptual Structure Design Applied to Interactive Optimization Models
訳題:概念的構造設計のインタラクティブな最適化モデルへの適用
著者:M. Schafer, D. Hartmann
著者所属:Ruhr-Universitat Bochum, Germany
雑誌名:Conceptual Design of Structures Vol.1, Proceedings of IASS Int. Symp. Oct. 7-11, 1996,Stuttgart. pp.347-354
用語:
 原語:Non-Uniform Rational B-Splines(NURBS)、Object-Oriented Paradigm、hierarchy、interactive structural design
 日本語:NURBS、オブジェクト指向パラダイム、階層、インタラクティブストラクチャデザイン

内容要旨:
構造物の完全な設計と計算のインタラクティブなツールの創造のためには、構造物の形(Computer Aided Geometric Design, CAGD)のフレキシブルで十分なモデリングが必要である。最近の研究によると、NURBS(現在CAGDの中でもっとも洗練されたモデリング技術)の応用は、形状のモデリングのインタラクティブな技術に対する新しい可能性を示唆している。本論文は、 NURBSをベースとした設計要素へ適用される計算機援用構造設計に対するコンセプトについて述べたものである。NURBSベースのインタラクティブなツールの開発は、十分に複雑で動的な挙動を含むソフトウェアを要求している。オブジェクト指向パラダイムの応用は、これらの特性を満たしている。異なった次元の構造要素がオブジェクト指向パラダイムの階層の中でどのようにエレガントに、そして、シンプルに定式化されることができるかが示されている。コンセプトのキーポイントは、構造要素の特性、オブジェクト指向パラダイムへの応用と、曲線、表面、体積の数学である。この手法の特性はいくつかの例を用いて議論されている。

NURBSを用いた幾何学的記述
計算工学において、CAGDはしだいに重要になっている。CAGDの基本要素は、点と、曲線と、表面と、体積に分けることができる(それぞれ、0、1、2、3次元の形状)。この中において、いくつかの点(コントロールノード)の座標間の数学的関係によってひとつのパラメトリック曲線が定義される。ある特定の種類のパラメトリック曲線は、しばしば用いられるB-スプライン(ベーシックスプライン)である。
Fig.1:キュービックスプラインに対する形状関数(p=3)。
しかしながら、B-スプラインは基本的な幾何形状(放物線、双曲線、楕円)を完全に表現することができない。この欠点は重みというコントロールパラメータを追加することによって取り除くことができる。それゆえ、NURBS(Non-Uniform Rational B-Spline)とよばれている。全ての重みを1にすることで、B-スプラインはNURBSの特別なケースとして定義することができる。すなわち、NURBSの形は、座標・重み・パラメータノード数の3つのコントロールパラメータによって変化する。
Fig.2:修正されたノード座標の効果。
Fig.3:Fig.2と同じノードの重みを変化させたときの効果。
Fig.4:コントロールノード6における3倍のパラメータノードによる連続性の修正。
全ての変化は局部的な効果のみを生み出している。この特性は曲線の特別な変化に対して重要である。
議論されたNURBS曲線の特性は容易にNURBS面やNURBS量へ変換されることができる。

例題
ワイングラスのモデリング
ワイングラスの表面は、単に一つの二次元設計要素:円によって容易にモデル化されることができる。
Fig8b:ワイングラスの形が特定のコントロールノードの修正によりいかに影響されるかを表している。
Fig.8c:コントロール曲線9の重みの変化が示されている。
Fig.8d:コントロール曲線7のバランスの効果が示されている。
テント屋根
2番目の応用は、一つの二次元設計要素の利用によりモデル化されるテント屋根である。Fig.9は適用されたコントロールノードと曲線を示している。
最初の例と同様、個々のパラメータの変化は初期形状の多様性を許容している。
ダムの壁
最後に3次元設計要素の特性を表す。例題は、初期の角柱の体積(Fig.12a)が、しだいに個々のコントロールノードの座標を修正することにより、いかにダムの壁へと変換されていくことができるかを示している。

結論
ここで述べたコンセプトは、新しく、非常に強力な幾何学的なモデリングの方法を述べている。少しの、しかし重要な幾何学的な自由度のみを用いることにより、このアプローチは、すでにいくつかの出版物(たとえば、Hartmann他1995)で証明されているように、構造最適化を大いに改善することができる。
構造工学同様、建築工学に対しても、この新しいコンセプトは、ユーザーに親しみやすい基礎となり、インタラクティブな構造設計、とくに、構造最適化において、非常に合理的な道具となる。

(平成9年5月9日 西田明美 抄録)

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原題 :THE ANALYTICAL AND NUMERICAL GENERATION OF SMOOTH CURVES AND SURFACES
訳題 :平滑な曲線・曲面の解析的および数値的生成法
著者 :Ch. Williams, M. Barnes, E. Nsugbe
著者所属:University of Bath, U.K.
雑誌名 :Conceptual Design of Structures Vol.1, Proceedings of IASS Int. Symp. Oct. 7-11, 1996, Stutgart. pp. 360-367
用語:
 原語:catenoid, helicoid, equal mesh and hanging nets, blending surface
 日本語:カテノイド(カテナリー曲線をを母線としてできる回転曲面)、ヘリコイド(らせん面)、 ケーブルネットによる吊下げ曲面、結合曲面

内容要旨:
 自動車、建築、土木などの構造物やCGにおけるオブジェクトの幾何学的形状を決定 するときに、どのような理論・数値解析の方法が用いられているかを具体例を用いて 紹介している。
 平滑な曲線を記述する方法としてスプライン曲線がある。スプライン曲線とは曲線 に沿った曲率の2乗の積分が最小、すなわちひずみエネルギーが最小となる曲線であ る。また、スプライン曲線の曲率は曲げモーメントに比例し、コントロールポイント で勾配および曲率は自動的に連続条件を満足する。スプライン法による曲線の記述は 曲面へも応用することができ、実際に自動車のボディーのパネル形状を決定する目的 で先駆的な研究が行われてきた。
 しかし、スプライン法は与えられた点を補間するための方法であり、能動的に曲線 や曲面を生成する方法ではない。能動的に生成される曲線の具体的な応用例として、 Figure 8〜10に示す橋の形状を挙げている。この例は、最初に適当な関数で与えた形 状をコンピュータで図化し、試行錯誤的に関数を修正することによって曲線を決定し たものである。
 また、生成される曲面の応用例として、(i)石鹸膜曲面、(ii)ケーブルネットによ る吊下げ曲面、(iii)結合曲面を挙げている。石鹸膜(極小)曲面は最も研究されて いる曲面であり、その中でも簡単な例としてカテノイドとヘリコイドによって生成さ れるものをFigure11に示している。
 ケーブルネットによる吊下げ曲面としてAntinio GaudiによるColonia Guell(Figu re12)や、Otto教授によって計測された模型実験のデータを基にBuro Linkwitz(構 造設計事務所)が数値計算により図化したManheim gridshell(Figure 13)、リヤド のCouncil of Ministers building(Figure 14)などをを挙げている。以上の吊下げ 曲面では、模型実験によるデータを参考として曲面形状の数値解析データを生成して いる。しかし、数値計算だけによっても幾何学的形状を得ることができ、その具体例 として自重および隅部のスラスト力の平衡より得られるドームの形状をFigure 21に 挙げている。
 結合曲面は複数の球や棒、リング、平面からなるオブジェクトの組合せを関数を用 いて生成するものであり、オブジェクトの境界が滑らかに表現できる特徴がある。具 体例として、二つの球が移動し結合する場合(Figure 23)や、棒(管)どうしの結 合(Figure 24)、棒と平面の結合(Figure 26)を挙げている。  最後に、この論文は数学的手法による幾何学的形状の生成の可能性を示唆している だけであり、数学的手法が必ずしも最良なものではないと断っている。その実例とし て、コンピュタを利用することなく設計されたCitoen DSpecial(Figure 27)を挙げ ている。

(平成8年11月13日 瀧 諭 抄録)

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原題:CRITICAL APPRAISAL OF THE COLLABORATION BETWEEN ENGINEERS AND ARCHITECTS IN BRIDGE DESIGN
訳題:橋梁設計での構造家と建築家との協力関係における評価について

著者:R.Walther
所属:Walther Mory Maier, Basel, Switzerland
雑誌名:Conceptual Design of Structures Vol.I, Proceedings of IASS Int. Symp. Oct. 7-11, 1996, Stutgart, pp459-466

要約
 橋梁設計における構造家と建築家との協力の利益と制限は実例により述べられる。建築家による 主導的な役割分担の最近の傾向は、まれに満足した結果をもたらす。一方、構造家は、現代の橋梁 の品質を向上することができるのである。

1  イントロダクション
 まず実例として、小規模だが非常に優れたケルハイムの歩道橋(FIG1)が挙げられる。構造家 と建築家との協力関係は非常に有効的である一例である。マイン−ドナウ運河がケルハイムのオー ルドタワーの前を横切っていたため、その歩道橋は十分なクリアランスを残して作られなければな らなかった。この競技設計の入賞者であるK.Ackermannは、必要とされる高い傾斜路と階段による 直線の橋は、町とそのタワーの景観を壊してしまうだろうと感じていた。ゆえに彼は水平面にカー ブしたバイパスを探し出すことにより、これを避けようと提案した。その結果、比較的平坦な傾斜 路をもたらしたのであった。この考えにしたがって、構造家J.Schlaichは円弧の内輪において奇 抜に配置されたハンガーによる円形サスペンションの非常に美しい橋に仕上げた。  しかし、そのような成果は、仮に各々の立場が適正化され理解し、そして他との論議に対して受 容性があってのみ達成されるのである。それは、不幸にも、通常のケースではないのである。何人 かの構造家は、彼らの教育、経験そして探求により、かれらは完全に一人で橋梁の設計を行うこと ができ、それゆえ構造的な見解が重要になる範囲では、建築家との協力関係を必要としなくなる。 一方、建築家への橋梁設計における主導的立場の割り当ては、流行を追うだけの人になってしまう。 構造家は狭い意味で、新しい概念と形状の発展とを妨げる構造的な仮定をしたので、そのようにな ってしまった。 したがって、実例により橋梁設計における建築家との協力関係による利益と制限を判断すること は見落とされがちである。美的感覚の世界では、その過ちを誰にも追求できないので、その評価が 時として少々主観的になる。しかし、構造家はこの重要な話題について、彼らの意見をもっと活発 に表現する勇気を持つべきではなかろうか。

2  著名な橋梁設計にみられる建築家の役割
 橋梁の美しさはその構造的なロジックによるとよく言われる。これは、サスペンションやケーブ ル支持、もしくはアーチ橋のようなロングスパンタイプのものに言えることである。荷重伝達シス テムは構造物全体の視覚的外観を支配し、素人にとってさえ簡単に理解できる。ここで、形は機能 に従うという原理は避けられないことであり、要求される設計はかなりの構造家のみなされる。ゆ えに、建築家の行動可能範囲を制限してしまうのである。しかし、これは彼ら役割があまり重要で ないということを意味するのではない。 その事例が、ドイツのデュセルドルフを流れるライン川にある。それは第2次大戦後、デュセル ドルフ市の建築家、タムズ教授の監督により建設された。彼は、その4つの橋について、調和のと れた統一感のようなものを描いていた。それゆえ、現在デュセルドルフ市は美しいケーブル支持橋 群を有している。それぞれの橋は異なった性質をもち、同時に他の橋とは親類関係にある。そのよ うな調和の努力が巨大な本四架橋(全ての考えうるロングスパン橋梁構造物のつじつまの合わない 混乱さを持つ橋)に活かされなかったのは、悔やまれることである。

3  最近の傾向における注目
 発達し続けるモータリゼーションのため、有用性を持ち、時として単調な橋梁が、ここ10年多 く建設されてきた。その橋梁は、構造家が創造性に欠落しているのではという印象を多方面に抱か せた。その結果、多くの建築家は、要求に応じて、何の知識や経験も無しで橋梁設計に挑んだ。も っぱら非常に少ない成功例と仮定された能力に頼りすぎ、結局、その努力は最小限の結果しか導き 出せなかった。  パリ市内を横切るセーヌ川にかかるAusterlitz amontのための競技設計は、橋梁の概念設計を 行う建築家を助ける風潮の一例である。参加者は10人の国際的な有名な建築家であった。彼らは、 その提案のための解析を行うため20の構造事務所を選んだ。が、予想通り、計画の大半が簡単に は実行できなかったため大失敗に終わった。ゆえに審査員は平凡な連続3スパンの梁で処理しなけ ればならなかった。結果として、高いコストと競技設計の努力が認められたかどうかの疑問を露わ にしただけであった。  これは他とは無関係の出来事を意味していない。たがそれはむしろ今の風潮の兆しであり、構造 家という職業とその組織が、明らかに間違った方向で、より発展した形状に対して反対の立場をと った事例であったように感じられる。

4  結論
 橋梁設計における構造家と建築家との建設的な協力関係は野心的であり、美的感覚で説得力のあ る外観を大きく強調できるということ見ようとしてきた。だが、これは、仮に各々の立場が適正化 され理解し、そして他との論議に対して受容性があってのみ達成されるのである。建築家は、構造 的評価が最優先事項であり、ゆえに構造家が主導的役割をとらなければならないという事実を受け 入れなければならない。一方、構造家は、仮に多くの橋梁構造家が美的感覚に対して優れいていた としても、建築家がこの点において一般的によりよいものを備えているという事実を素直に受け入 れなくてはならない。これは構造的な理由で実現不可能という、あまりにも安直な討議は、建築家 の慣習にとらわれない考えを殺してしまうため、あまり軽々しく使われるべきではない。 狭義の意味において、特有の動機に対してのオリジナリティーの追求は、あまり納得のいく結果 を生み出さないであろう。今日、橋梁は異常にまでに優れた、最初で最先端のオリジナルなものを 作り出す芸術なのだから。

(平成9年5月9日 兼清典彦 抄録)

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原題:Conceptual Design of Cable-Stayed Systems
訳題:ケーブル支持システムの概念的設計
著者:Z.Agocs
著者所属:Slovak Technical University, Bratislava, Slovakia
雑誌名:Conceptual Design of Structures Vol.2, Proceedings of IASS Int. Symp. Oct. 7-11, 1996, Stuttgart. pp.799-805
用語:
 原語:Cable Stayed System
 日本語:ケーブル支持システム

内容要旨:
はじめに
 現在のケーブル支持システムの発展の原動力(推進力)となったのは、近代的な解析法・施工法・適当な材料を用いたより経済的な構造物の建設の必要性であった。これらのシステムは、高強度の材料でつくられる細い引っ張り材を用いるという点で経済的である。経済的利点に加え、ケーブル支持システムは構造物の美的形状に新しい次元を与えている。この種の耐荷重システムはガーダーとサスペンションブリッジの間のギャップを埋め、現在では、人道や車道などとしてうまく用いられている。
 BratislavaのDanube川にかけられた鉄骨造のケーブル橋設計プロセスにおいて、理論上およびデザイン上非常に価値ある知見が得られた。

ケーブル支持システムの内力の分布や剛性に対する斜めケーブルの分岐があたえる影響
 ケーブル支持システムの内力の分布や剛性に対する斜めケーブルの分岐があたえる影響の理論的および実験的調査より、分岐をもつ塔の頂上において一定数のケーブルをもつ対称システム(Fig.1a)において以下のことが分かった。
・吊られていない連続なガーダーと比べて、
    ケーブル支持システムの曲げモーメント(Fig.2a)は約5倍小さい(1/5である)。
    ケーブル支持システムの最大変位は約4.5倍小さい(1/4.5である)。
・ケーブルの分岐はこれらのシステムの剛性だけでなく、内力の分布に関してもそれほど影響を与えない。
非常に密な対称分岐の場合も状況は同様である。ただ、施工のディテールが簡単になる。非対称システム(Fig.1b)で比較すると、曲げモーメント(Fig.2b)は連続なガーダーに対して2倍だけ減少し、対称なシステムよりも経済上劣る。
密な吊り上げ構造をもつケーブル支持システム(Fig.3)の挙動は、偏微分方程式(1)によって記述される。ケーブル支持システムの微小要素に対して、外力仕事より、(1)式を得る。
(1)式の解は、(2)式で与えられる。
計算の有効性は、モデルで検証されている(1990 Agcos)。得られた結果は、Fig.4の測定値および計算値と良い一致を示している。(2)式を用いることが、多次元の不静定ケーブル支持システムの初期設計を迅速に行うための手助けとなる。また、(1990 Agcosによる)理論的および実験的調査より、幾何学的非線形の影響は約300mスパンのシステム(Fig.5)の場合には±10%を越えないことがわかった。


・対称なケーブル支持システムは、主に材料の利用という観点からいえば、非対称なシステムよりもより経済的である。にも関わらず、構造物の位置や現実的な境界条件より、実際には非対称システムで建設されることが多い。BratislavaのDanube川にかかる新しい橋(Fig.6)は歴史的なSt. Martin's DomeとCarpathian山脈を直接結ぶという状況にあった。Bratislavaの南からの景観を残すために、左岸に多くの大きな建造物をつくることができなかった。この問題を解決するために、右岸に塔をもつ逆対称なケーブル支持システムを採用した。中間のスパンが303.3mの橋はそれ自身の平面内で吊られ、ふたつの閉断面の箱形梁は十分なねじれ剛性を有している。
・次の例は、Prague近くにあるVlatava川にかかるパイプ橋の非対称なケーブル支持システムである(Fig.7)。左岸に鉄道の駅が接近していることより、非対称システムが選ばれた。塔はV字型をしている。斜めのケーブルは、(縦方向だけでなく)水平方向の力も支えている。
・似たような構造物に、Lucenecにある、冬季スポーツスタジアムの付加屋根に対する非対称なケーブル支持システムがある(Fig.8)。
・縦方向と横方向に非対称なシステム(分岐構造物)は、Austrian PochlarnのDanube川にかかる橋の国際学生コンペにより、自治体によって設計された(Fig.9)。
・ケーブル支持システムの複合タイプは、Piest'anyにあるVah川にかかるスパン61+290+61mのもので、筆者らにより設計された。

結論
鉄骨造耐荷重構造物の発達の特徴は、材料の使用量を減らすことと、外観の美しさを増すことにある。大スパン構造に対するひとつの方法はサスペンションとケーブル支持システムを利用することである。ケーブル支持システムの理論的および実験的結果は、「一定数のケーブル」の分岐はこれらの構造物の剛性を増すことに影響しないことを示している。分岐が非常に密な場合には、施工のディテールが簡単になるという利点がある。また、非対称システムは対称システムよりも経済性の面で劣っている。

(平成8年11月13日 西田明美 抄録)

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原題:  CASE STUDIES IN THE DESIGN OF WIDE-SPAN EXPO STRUCTURES
訳題:  博覧会における大スパン構造物の設計におけるケーススタディ
著者:  M.Barnes, W.Renner, M.Kiefer
著者所属:University of Bath, U.K., IPL, Radolfzell, Germany
雑誌名: Conceptual Design of Structures Vol.II, Proceedings of IASS Int. Symp. Oct. 7-11, 1996, Stutgart, pp814-821
用語:  counter-stressed-(応力を)相殺させる
     boom-ブーム、パイプ
     fan support cable-ファンサポートケーブル
     transverse cable-縦走ケーブル
     scallop-スカラップ
     glazed wall-波状壁
     lens-レンズ

0.要約
 この論文はセビリア博覧会において二つの大スパン構造物の形態と構造工学的設計について述べている。二つの大スパン構造物とはオレアダ(Oleada)と名付けられたメインエントランスと、全面空気膜屋根と側面を波状ガラス壁を用いたドイツ館である。

1.オレアダ エントランス構造物
 この構造物の特徴はケーブル補強された膜により、応力を相殺させたアーチブームをピン接合のテンセグリティー構造物を採用したことであった。二つのアーチブーム構造物は互いに裏がえっている(fig.5)。  テンセグリティーアーチブームは、当初、オレアダ1ではV字に吊されているケーブルにより、またオレアダ2ではスプレーケーブルにより、垂直面を安定させるように考え出された。オレアダ1の逆アーチは地面へのエンドタイによる圧縮力が加わっている。オレアダ2の場合、メインマストの頂部への高張力ケーブルによりアーチに圧縮力が加わっている。これらのケーブルからの張力は、ファンサポートケーブルにより釣り合い状態になっている。垂直面のブレーシングは、弦ケーブルとブーム材のなす角度を増加させる中間ストラット材と一体化した各ブームにおいて、その相互節点で接合される張力ケーブルの弦材によりもたらされている。ブームへの横面安定性は膜表面内で縦走ケーブルにより維持される。縦方向のケーブルは、主縦走ケーブルを相殺するブレキシブルな膜材に置き換えることが不可能であったので、必要となった。完成したその表面は、膜材と約9m×5mのメッシュのケーブルネットを膜のポケットで一体化している。  全体系の崩壊への局部的、急激な座屈荷重において、直交する2つの風向による最悪の荷重組合わせ(荷重係数1.8)による構造的安定性を調べる必要があった。この状態で、オレアダ2は安定性を維持したが、オレアダ1は不安定となった(fig.8)。それは安定ケーブルの長さと、その伸張性のためであった。解決策として、fig5,6に示されるようなスパイラルケーブルのブレースと各ブームの節点で3つの60度のストラット材を用いることが考え出された。それはfig7に示される縦軸方向ストリンガーケーブルを用いる有効な仕様によるものである。  上記のシステムは最も厳しい荷重条件の下で有効に働いたのだが、複雑なブームの節点の接合がとても割高になり建設が困難になってしまった。そして最終段階で、当初のテンセグリティーブームの構想は薄肉溶接された中空パイプの有利性により結果的に断念させられた。スパンがオレアダ1で75m、オレアダ2で60mに対してパイプ径がそれぞれ810mm, 640mmとなったので、より一層軽快さが表現される。しかしながら、テンセグリティーブームを採用した場合、その必要径は驚くことに276mmとなっただろう。

2.ドイツ館
2.1.レンズ空気膜構造
 上面と下面の空気膜は反発しあい内部にある縦横方向のケーブルによる面で強化され、その境界をなすスペーストラスで取り囲まれている。  構造的な挙動はfig.15と16で説明される。レンズ構造の水平方向への変位においてマストの頂部はN方向に移動し、バックステイケーブルのグループaは延長されなければならなかった。マストは常時圧縮力を受けるため、傾いたマストの根本での反力Hの水平成分が発生する。これは楕円トラスの境界へのテラスの節点からケーブルに発生する力bとb'により釣り合う。そして縦方向のケーブルcとc'はレンズ構造の捻りを抑制する。重要となるバックステイのケーブル群の大きな弾性伸びによりケーブルの径(この場合、基本的に42mm径)は決まってしまった。そして風洞実験から得られた最も厳しい荷重下において、横方向の変位の最大値は約250mmとなった。

2.2.波状壁構造物
 波状壁構造物は0.55m間隔の均一なグリッドを持った主に直交縦走ケーブルネットワークで構成される。各々の縦走ケーブルは2重になっている。ネットワークは上面と下面の曲線境界ケーブルに対し、そして壁の端でケーブルスカラップに対しそれぞれ初期張力が与えらる。ポリカーボネイト板を使用したガラス構造はfig.18と19のネットワークで説明される。建設費用の面から、ネットワーク形状の設計的な目的は可能な限り規格化された1枚のパネルで、そしてネットの張力が合理的に分配された均一なメッシュネットワークを生成することであった。基本パネルは接続限度内で理想として正方形であった。が、ネットの相当なせん断力が境界条件により、その目的は正確には達成できなかった。最もよい解を得るためのネットワークの曲率とネットオリエンテーションの予備的解析は、壁表面上の均一載荷と測地線による有限要素法解析(fig.20)を使用して行われた。測地線間のオリエンテーションとバリエーションは基本パネルの最大の数を生成するネットワークの位相幾何学を与えたのである。正確な境界接続条件による最終的な解析と形状調整は0.55m間隔の均一なグリッドを使って行われた。

(平成9年3月3日 兼清典彦 抄録)

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原題:ALUMINIUM LATTICE STRUCTURE:DEVELOPMENTS AND INNOVATIONS IN CLEAR SPAN ROOF SOLUTIONS
訳題:アルミニュームラチス構造:大屋根における開発と革新
著者:A.Lopez,K.Troup
著者所属:Temcor, Carson, USA
雑誌名:Conceptual Design of Structures Vol.1, Proceedings of IASS Int. Symp. Oct. 7-11, 1996, Stuttgart. pp. 1074-1083
用語:
 原語:
 日本語:

内容要旨:
 建物の設計において、初めの段階で、要求を満たす構造計画を十分検討することが望ましい。特に、多目的アリーナや大空間構造の場合、構造の形状や建設材料は、重要な要素であり、初めに決定すべきである。
 大空間構造は、スポーツや娯楽設備によく利用される。特に、球形ドームは、比較的、施工し易く、構造的に優れ、経済的にも有効であるため、他の構造形状より利用される。しかし、円形の下部の上に屋根を乗せる場合、最も望ましい屋根の形状を見いだすことは困難である。アリーナや大空間構造の場合、屋根構造の形状は、スタンドのプランによって決まる。スポーツアリーナのプランは、一般的に長方形であるため、球形の屋根は、スタンドの形状に適した形状とは言えない。
 この論文では、球形にとらわれず、楕円球、円錐形、卵形の構造を紹介する。また、本論文では、大空間構造では珍しい構造材料として、アルミニュームを取り上げている。構造材料としてのアルミニュームの利点は、(a)強度と重さの比が高い、(b)腐食しにくい、(c)加工しやすい、などがある。

卵型の形状を覆うもの
 Baltimoreの卵型のコンクリートタンクは、国内の排水をバイオの力を利用して、処理するものである。バイオの力を有効に利用するために、適度の温度を保たなければならない。そこで、コンクリートタンクの外側表面に断熱材が要求され、美的に優れ、排水による腐食に耐えられるアルミニュームを使ったトラスが採用された。
アルミニュームとコンクリートの温度膨張率の違いは、支承部分に細長い穴をつけ、アルミニューム構造の変形を独立させることで解決した。

円錐ラチス構造
 1994年にパリの近くのテーマパークに建てられた直径71.3mの円錐単層ラチス構造を図2に示す。この設計において、円錐形の座屈荷重の低さや、アルミニューム構造と鉄のトラスの間の温度膨張の違いなど、様々な課題が出てきた。これらの課題に対し、実験や非線形解析を行うことで、克服した。

二重放射状ドーム
 無線望遠鏡の直径25.3mドームに対し、重さ制限やドームの支持条件は難しい問題であった。ドームのフレームは、重さ制限があるため、軽量でかつ強度と重さの比が高い材料としてのアルミニュームが使われた。これは同じ強度を持つ鉄に比べ、1/3の重さで設計された。
 軽量なアルミニュームを構造システムに利用することで、重量制限などを満たすことが可能となる。

楕円球ドーム
 楕円形状の下部の上の屋根の形状は、楕円球の表面を切りとることで、図4に示す様にできる。その屋根の形状を3角形で細分化することで、屋根の構造システムが完成する。この構造計画は、ライズスパン比が低い大屋根に対し、有効である。

卵型、修正卵型ドーム
 下部の上の卵型表面の屋根の形状は、円筒表面と球形表面を切りとることで、図5に示すようにできる。
 ライズスパン比が高い場合、卵型は、楕円球より座屈し易い傾向がある。ライズスパン比が低い大空間の場合、楕円球の構造の強度は、シェル構造の強度に近い。

まとめ
アルミニュームの生産性と強度と重さの比の高さは、有効な構造システムの開発を可能とするものである。これらのシステムを使うことで、様々な構造の形状が、実現可能となる。

(平成8年11月13日 那花 謙二 抄録)

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原題:  TENSIONED MEMBRANE DESIGN FOR A MARKET IN TIMISOARA,
     ROMANIA
訳題:  ルーマニア,チミソアラの市場における張力膜の設計

著者:  V.Gioncu, L.Tirca, H.Durr, R.Essrich
著者所属:Technical University Timisoara, Romania,Ingenieurgemeinschaft Flachentragwerke, Reichenau, Germany
雑誌名: Conceptual Design of Structures Vol.2, Proceedings of IASS Int. Symp. Oct. 7-11, 1996, Stutgart, pp1003-1011

原語:
日本語:

アブストラクト
 本件において、他の多くの構造形式の中から、張力膜構造が、その軽量さと美しさにより採用されることとなった。膜構造特有の表面形態と安定性に関して、その困難さにより複合膜構造を用いた。

イントロダクション
 張力膜構造は、建築家や構造家にとって新しく刺激的な構造形式、つまり建築的表現と構造形態が完全に調和するようなものを創造可能とする。なぜなら、膜材料が非常に軽く、これらの構造形式は非常に効率的で経済的であるからである。しかしながら、その表面形態、安定性、変形、アンカーなどの設計において多くの課題を与えるような不利な点がある。もっともいい方法は、複合張力構造つまりフレキシブルな膜材とラーメン構造との組み合わせである。また、その構造系は積雪と風からの荷重に対して、その挙動を適正にするためにプレストレスとされなければならない。

概要
平面、立面、側面図をFig.1に示す。

形状決定
 膜面は、中間部と妻部の2つの範囲に分けられる(Fig.2)。中間部の最小応力から安定する膜面を導き出し、そのせいの低い反りから高い反力が発生した。最小応力の変更後、効果的な反りにかわり、それにより適正反力が発生したのであった。 [中間部] トラスの裂け目に沿った線は、膜形状の長辺方向の外周境界線を形作っている。また膜面の短辺方向は、境界ケーブルの曲線により、その形状を形成している。全体としては、膜面下部のとてもフラットなテンションスチフナーにより、設計がより困難になったのである。膜材の縦方向と横方向の糸の張力比の選択のため、膜面の平衡状態での形状解析が必要となった。その形状とはテンションスチフナーに干渉せず、それと同時に積雪荷重により過度な応力を発生させないものである。結局、その張力比は縦方向1に対し横方向3となった。 [妻部分] この部分では、負の曲率のまま何の干渉も起こさずに、膜材のレイアウトが可能であった。トラスに沿った部分の境界条件は、中間部と同じである。外周部分はバウンダリーケーブルにより形状決定された。

構造計算
 構造計算において、設計荷重の伝達と、安全面の評価が問題となった。ルーマニアの基準では積雪および風荷重下の軽量構造物に対して、2.0を越えるような非常に高い安全率を要求しているのである。本件における膜構造物の短い使用期間(20年)のために、安全率を積雪1.5、風1.3と低減したものが使われたのである。

サイジング
 ここで、建築敷地内にすでにある構造物へ、個々の詳細ポイントを当てはめる試みがなされた。成り行き上の行き違いにより、ある問題に直面した。躯体が既に組み上げられていたという事実に事を発し、既に建設し終わった躯体に後施工を施す必要があったのである。特に妻部においては膜面の幾何学が多少異なってしまうような施工がされたからである。膜材のより安全な選定には、長年の経験と、科学的資料の裏付けが用いられた。また、市場に出回っている膜材の短期強度は一般的に知られていて、それらは試験と工場によ証明書によって確かめることができる。膜材とケーブルのディテールはFig.3に示されている。

裁断計画
 裁断幅の計算の幾何学的な基本は、形状の決定である。ここで提案される境界線は、個々の裁断幅において、既に決められているケーブルの花づな装飾の基準線となる。使用膜材の原反幅のために、各裁断幅を境界とする測地線をもとに計算された。各裁断幅が、その測地線間で計算され、発生したその幅が膜で埋め合わされた。膜材の縦糸、横糸の異なった伸びの挙動の考察は、裁断幅を決めるに当たり、きわめて重要であった。計算からの設計プレストレスを実現可能にするために、膜材の2軸伸び特性にしたがって、横糸方向が縮小された(横糸の縮小率1.5%)。

建設
 Fig.4に膜工事の様子を示す。

(平成9年1月10日 兼清典彦 抄録)

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原題:CORRUGATED METAL SHEETS - UNNOTICED POSSIBILITIES
訳題:コルゲート金属板の新しい使用法

著者: A.Reichhart
著者所属:Rzeszow University of Technology, Poland
雑誌名:Conceptual Design of Structures Vol.2, Proceedings of IASS Int. Symp. Oct. 7-11, 1996, Stuttgart. pp. 911-918
図12,表0
用語:
原語:Corrugated metal sheet, rectilinear surface, generatrix, directrix
日本語:波形金属板,線織面,母線,準線

内容要旨:
はじめに
構造技術者は、機能、美観、材料といった観点から基本計画を考え、建築家に示唆を与えることにより、建築全体に影響を与えることもある。本論文では、コルゲート板から シェル形状を作る方法と、実際の利用例について述べる。コルゲート板からシェル曲面を作る方法は、60年代に研究され設計に利用されたが、単に曲げや捩じれを与えることによって得られる円筒やHP曲面に限られていた。しかし、もっと詳細に検討すると、さらに多様な形状が可能であることが判り、屋根建築の設計にも利用できる。最近の4実施例について後半で紹介する。

シェルの形成法
コルゲート平板を用いて作られるシェル形状は曲げ、捩じれや曲げ捩じれ等の弾性的な変形とその限界値によって規定される。平板の形状は長方形である必要はなく、曲率変化を伴う曲げや断面形状の変化する捩じれ、これらの変形と面内方向の伸び縮みの組み合わせ等により様々な形状が可能である。 コルゲート板の変形に伴う境界や板内部の力はコルゲート板の強度と設計基準値に 従って限定される。 コルゲート板により形成されるシェル形状は、波板の折り返し線が直線であるから、線織面である。ただし、母線間を埋める曲面はコルゲート板に許される変形でなくてはならず、構造的に規定される。 以上のことからコルゲート板によるシェルの形成法は以下の2ステップに分けられる。

  1. 2本の準線を決め、母線を選ぶ。
  2. 構造的な規定を考慮しながら、順に母線の位置と方向を決めていく。

設計評価基準
コルゲート板シェルを設計に用いるかどうかの意志決定において以下の評価基準を考慮する。

  1. 美観: コルゲート板シェルは、”四角四面”な建築の単調さを緩和するだけでなく、うまくプロポーションを設定することで建築全体の美観を向上することもでき、自然環境ともマッチする。
  2. 設計性: コルゲート板シェルの設計は平板屋根の設計に比べ手もかかるし、頭も使わなくてはならない。CADやFEMの利用で克服することができる。
  3. 施工技術: 平板屋根と比べさほど施工性に困難はないが、板の捩じれがきつくなると板の長さ変化等の予測が必要になる。
  4. 経済性: 平板と比べ材料費はさほど差はない。構造設計段階で費用がかかるが、斬新な概観が得られるため、それだけの価値がある。

実施例
サイロ
直径12m高さ23mの油煙サイロの頂部に機械室を増築した。自重と雪荷重を少なくしなくてはならなかった。増築部は円錐形屋根を持つ円筒、平板屋根を持つコルゲート板の円筒、円形平面に寄せ棟的な合わせ部を持つコルゲート板による屋根の3つが考えられたが、重量の点から後者2者となり、斬新な概観から構造技術者の推した3番目の案が受け入れられた。 この案ではコルゲート板は様々な角度の捩じれを生じる。ここで選ばれたコルゲート板は最大11°/mの捩じれが可能であり0°/mから11°/mまでが利用された。形状維持のため0.68kNが各谷部分に導入された。形状はコノイドとは異なりまた、板が直交異方性であることから構造解析にはFEMを用いた。

教会屋根
建築家の提案は平凡であり、構造家は20の擬HPシェルにより構成される屋根を提案し、シェルが採用された。下部構造はほぼ同じ、材料の量などはシェル案の方が少なかった。

パビリオン
建築家は四角形の平凡な案を提案した。6つの擬コノイド寄せ棟シェル屋根からなる案を提案したところ受け入れられた。シェルの寄せ棟部はシェル面の捩じれと長手方向のたわみによる曲線に合わせたアーチ型のトラス梁で支えられた。

屋外ステージ屋根
屋外コンサート用のステージ屋根をシェルで設計した。成の高いコルゲートシェル板が残響効果の低減に有効である。シェルの両側面部分がシェル梁となり、前面風荷重を伝える。トラスのタワーで、自重、積雪、背面風荷重に耐える。

(平成9年1月10日 川口健一 抄録)

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原題:MEMBRANE COVERINGS. THE MAIN PRINCIPLES AND THE ANALYSIS OF REALISED CONSTRUCTIVE DECISIONS
訳題:金属膜屋根:基本原理と実施計画の分析

著者: I.L.Roujanski
著者所属:Melnikov Central Research and Design Institute of Steel Structures, Moscow, Russia
雑誌名:Conceptual Design of Structures Vol.2, Proceedings of IASS Int. Symp. Oct. 7-11, 1996, Stuttgart, pp. 1112-1119 図6,表0
用語:
原語:Membrane covering
日本語:金属膜屋根

内容要旨:
要約
過去20年の間にロシアで開発された金属膜 (厚さ1.5-6.0mm) の屋根について述べる。様々な工夫によって短期 間の自動化された施工が可能である。金属膜はパネル化された屋根構造の弦材をなす。工場で一体化して作成した 膜は現場での組み立てを少なくし、施工の信頼性を増す。

張力金属膜によるブロックパネル構造
この構造は、予め緊張された金属膜がブロックパネルの弦材及び屋根葺材としての機能を同時に果たす新しいタ イプの構造である。ブロックパネは厚さ1.5-2.5mmの金属膜が骨組みに固定されたものである。現状では24mか ら84mのスパンが実現されているが、220m程度まで可能である。非常に剛性が高い構造なので大スパンに対 して梁せいを少なく出来る。また、材料や施工期間の節約が可能である。
ZSKAのオリンピックスポーツ施設
モスクワのこの施設は弦材までで最も大きい大屋根であり、大きさは84x300mである。構造は鋼性のスト ラットで補強されている。桁行きのスパンは84mで24mごとに明かり取りがある。ブロックパネルの大きさは 2.5mx104mであり、頂部のせいは6mである。上下のパネルがあり上弦材は圧縮、下弦材は引っ張りであり、これ らの金属膜は工場で予め所定の応力値が与えられる。2.5mx104mのパネルは2列一組にされる。各パネルの重さは 70tから100t(明かりとりのあるパネル)であり、母屋下の梁まで傾いたガイドの梁の上をウインチで引っ 張り上げられる。この屋根のブロックパネルの据え付けは5日で終わった。

懸垂式金属屋根
懸垂された2枚の懸垂膜を共通の骨組みでつなぐと、曲げ剛性を持った屋根システムが出来る。上下弦膜の間隔 を広げることで剛性を増すことが出来る。金属膜は工場で自動生産し、大きなパネルとすることで現場の組み立て も機械化することが出来る。
Jaltaのコミュニティセンターの屋根(1976年)
曲立半径100mの円筒の一部の形状で、スパン56m、四隅をV型の柱が支えている。柱とシェルはヒンジ接 合で、シェルは柱に対して回転できる。パネルは3x12mであり、風の吹き上げ及び雪の偏載に対して上下弦膜 の間隔は1mあれば充分である。パネルを組み合わせて60x12mのブロック(最大72t)を構台の上で作り 所定の高さにリフトアップされ架設のレール上を所定の位置まで移動させる。ブロックの作成はノンストップで行 われた。ケーブル構造で同じ屋根を覆う場合に比べ、27パーセント鋼材の節約となった。

実施例
サイロ
直径12m高さ23mの油煙サイロの頂部に機械室を増築した。自重と雪荷重を少なくしなくてはならなかった。増築部は円錐形屋根を持つ円筒、平板屋根を持つコルゲート板の円筒、円形平面に寄せ棟的な合わせ部を持つコルゲート板による屋根の3つが考えられたが、重量の点から後者2者となり、斬新な概観から構造技術者の推した3番目の案が受け入れられた。 この案ではコルゲート板は様々な角度の捩じれを生じる。ここで選ばれたコルゲート板は最大11°/mの捩じれが可能であり0°/mから11°/mまでが利用された。形状維持のため0.68kNが各谷部分に導入された。形状はコノイドとは異なりまた、板が直交異方性であることから構造解析にはFEMを用いた。
ハンガーのための金属屋根(Riga)
108x60mで開口部が108mスパンのハンガーである。支点の高さは24mと13mと違っており、建物 内部の体積を節約している。開口大梁は108mスパンでせいが7.6mである。他の3辺は6m間隔で支えられ た連続梁で支えられている。金属膜の厚さは4mmだが、風の吹き上げに対しては、40mmの厚さのコンクリー トを打つことで自重で抵抗する。 (懸垂膜によるスラスト抵抗機構の記述があるが、不明である。) 金属膜は幅12.3mのロール状態で現場に持ち込まれ、構台の上で架構され、可動式の装置によって所定の場 所に運ばれる。金属膜の接続はアーク溶接と電気リベット溶接の組み合わせで、半自動的に行われた。

(平成9年3月3日 川口健一 抄録)

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原題:Computer Aided Design and Manufacture of Membrane Structures
訳題:膜構造の計算機援用による設計と製造
著者:S. Ganti, G. G. Schierle, M. Yin
著者所属:University of Southern California, Los Angeles, USA
雑誌名:Conceptual Design of Structures Vol.1, Proceedings of IASS Int. Symp. Oct. 7-11, 1996, Stuttgart. pp.230-237
用語:
 原語:warp direction, fill direction, anticlastic
 日本語:縦糸方向、横糸方向、アンティクラスティック

内容要旨:
 本論文は形状決定、解析、応力視覚化、パターンデザイン、レーザー切断等を含んだ、計算機援用による膜構造の設計と製造のプログラムのシステムについて述べたものである。アンティクラスティックな布と様々な曲率を有するケーブルネット構造との相関によるプレストレスの安定化効果の研究についても示されている。CADプログラムは、動的リラクゼーション理論を基礎とした主プログラムのためのプリプロセッサーとポストプロセッサーのモジュールである。プリプロセッサープログラムは、図形入力をベースとしたおおよその境界で接合された一様な布のメッシュを定義し、視覚化する。主プログラムは、厳密な形状決定と荷重下における応力と変形の解析を行う。ポストプロセッサープログラムは、カラーコード化された応力パターンを視覚化し、レーザー、ナイフ、または、手動により、フラットベッドプロッターによって切断するための布のパターンを決定する。パターンは、縫い目幅同様、横糸方向と縦糸方向における弾性係数をベースとしたプレストレスを考慮している。プレストレスに関する研究より、荷重下においてゆるみを発生させないために必要とされるプレストレスのレベルは、面の曲率と剛性に依存することが示されている。また、布よりもケーブルネットの方が高いプレストレスを要求することがわかった。

Preprocessor
プリプロセッサーは、幾何学的モデル、材料特性、作用荷重を定義し、幾何学的形状を画面上で確認できるようになっている。
Geometric model
Fig.1に示す図形入力をベースとする。ユーザーは、画面上で境界をデザインし、布のパターンに対するメッシュサイズを選択し、固定点の鉛直高さを定義する。固定点間の補間座標上でエッジケーブルが結合されて境界となり、境界間のメッシュが生成される。そしてそれは、主プログラムによる形状決定のための入力となる。表示プログラムは、形状確認のために平面図、側面図、アクソメを与える。プログラムは、図形表示用ファイルを主プログラムに対応する数値データに変換する。
Material properties
膜の横糸方向、縦糸方向、エッジケーブル、圧縮部材の材料特性として以下の情報が必要である。
・弾性係数
・断面積
・プレストレス
・コード(0=ケーブル部材、1=プレストレス部材、2=圧縮部材)
・最大強度
・タイプ(膜の縦糸方向,横糸方向,エッジケーブル,圧縮部材)
Applied load
作用荷重は、単位面積当たりの分布荷重として与えられ、各節点の支配面積に対応した荷重を各節点に対して作用させる。

Main program
プリプロセッサーモジュールからの入力データは主プログラムにおいて形状決定と解析というふたつの実行により処理される。最初の形状決定解析の実行により、与えられたプレストレスに対するアンティクラスティックな表面形状がわかる。一様なプレストレスは境界間の最小表面を定義し、一方、他の一様でないプレストレスは様々な応力パターンの表面曲率を定義するのに用いられる。解析の実行は荷重下における力と変形を与える。その出力はDXF(Data Exchange Format)ファイルの形式であり、ポストプロセッサープログラムで用いられる。プログラムはまた変位や残留応力他のファイルも生成する。

Post-prosessor
ポストプロセッサーは、ディスプレイモジュールとパターンモジュールとから成る。ディスプレイモジュールはワイヤーフレームイメージとしてあらゆる角度から構造物を視覚化する(Fig.2)。荷重の作用している構造物を初期形状と重ね合わせて、節点の変位を調査することもできる。ワイヤーフレームモデルはまた現実に近い光点による三次元の描画も可能である(Fig.3)。
Stress Display
ディスプレイモジュールはまた布の構造物の力のパターンも視覚化することができる。数値出力を比較することで、この描画は極限応力やゆるみのある領域をみつけるのにとても役立つ。プログラムは部材を見分けるために、カラーコーディング法を用いており、ある程度の範囲にある応力を色分けしている。利用者は1-10色または1-15色の範囲を指定することができる。プログラムはデータから最大応力と最小応力の値をみつけ、それらを10または15のレンジに分け、スクリーン上に色分けして表示、または、カラープリンターに出力する。また、構造物のそれぞれの要素の応力の数値を出力することもできる。色と数値指定の組み合わせも可能である。利用者は色の範囲と値を指定でき、また、プログラムは有用なデフォルトの値も有している。
Pattern Module
このモジュールは初期形状を基礎とした布のパターンを生成する。四角形メッシュは最初に三角形に変換され、線形のパターンとして一列に並べられる。そして、フラットなパターンとなる。パターンは、それぞれのプレストレスと弾性係数を基にした横糸方向と縦糸方向の伸びを考慮している。縫い目に対する調整もまた含まれている。出力は手動切断またはコンピューター支援のレーザーおよび回転ナイフの両方に用いられることができる。手動切断のために、プログラムはFig.4に示すような出力を行う。各パターンには見分けるために注釈がついている。切断の線は45から60cmごとに与えられる。
Computer Aided Pattern Cutting
布のパターンの計算機援用レーザー切断のプロセスは、FabCADプログラムを開発するプロセスにおいて研究されてきた。製造スピードと正確さはこのプロセスによって飛躍的に増大している。出力デバイスとしてのプロッターは、長い間知られてきた。しかし、ペンをもち図を描く同じデバイスがレーザーカッターと回転ナイフをホールドすることができるという事実が、この研究の一部として現実のものとなった。FabCADプログラムは、多くのCAD-CAMマシンの入力として共通のフォーマットであるDXF,HPGL,IGESまたはSTL(stereo lothography)などのファイルフォーマットでかくことができる。
フラットベッドプロッターは、織物産業にとって強力であることが証明された。ふつうのプロッターと異なる点は、ペンの代わりに、織物やポリエステルの材料を容易に切断できるレーザーカッターやナイフをもてる点である。パターンは最大5m幅で45m長さまでとることができ、プロッターは布を+-1mmの精度で切断することができる。また、最大速度は毎秒1.27mであり、そのために製造能力はすばらしくのびた。
Cutting devices:
プロッターの台はいくつかの異なった切断デバイスを付けることができる。電気的に動くレーザーカッター、円を描くナイフ、回転ナイフ、そして往復運動する織物ナイフ等をこれらのプロッターに取り付けることができる(Figs.5 and 6)。将来的な道具として、超音波やウオータージェットの切断デバイスもテストされている。布が動かないように、強力なバキュームにより布を切断テーブルの上に固定する。
FabCADプログラムはファイルを切断デバイスに適切なフォーマットで出力する。最もポピュラーなファイルフォーマットはDXFデータ変換フォーマット(ほとんどの図形ソフトで読めるASCIIフォーマット)である。
切断デバイスは、切断速度と圧力を調整するために、材料の表面と厚さを考慮している。
Prestress
アンティクラスティックな膜とケーブルネット(ふたつは簡単のため合わせて単に膜ともよばれる)はプレストレス、形状、荷重下における変形間で強い相互関係をもつ。プレストレスとアンティクラスティックな曲率は安定を与える。2点間で吊られた弦はどのような荷重に対してもその形状を調整するが、アンティクラスティックな膜は互いに反対の曲率で変形に対して抵抗する。このことは簡単なモデルで観察できる。ふたつのプレストレスの入った互いに交差する弦はその交点を安定させる(Fig.7A)。同様に、プレストレスのはいった弦から成る、アンティクラスティックな面を形作るふたつの層は、いくつもの交点または全体の面を安定させる(Fig.7B)。荷重作用下で、弦の一つの層は引張に対してその長さをのばし、片方の層は圧縮でその長さを縮める。プレストレスがないとゆるみが生じ、構造が不安定となる原因となる。それ故、アンティクラスティックな膜では、少なくともほとんどの膜の繊維が荷重作用下で正のプレストレスを保持すべきである。本論文の目的は、フレキシブルなケーブルエッジを有するアンティクラスティックな膜に対して要求されるプレストレスのレベルを、固定された梁のエッジを有する膜と同様に決定することである。
Methodology and Assumptions
本研究では、ふたつの計算機プログラムを実行している。プリプロセッサープログラム ISAP:Interactive Structural Analysis Processing(Schierle,1977)は、入力形状を定義し表示するために用いられた。主プログラムTRITRS:Truss Iterations(Haug,1971)は、以下に示す仮定の下、プロトタイプ構造物(Fig.8)の形状決定と解析に用いられた。
・5つのプレストレスレベル(荷重下で最大応力の30,40,50,60,70%)
・主曲率方向の膜のsag/span比1:5,1:10,1:15;横糸方向/縦糸方向それぞれの弾性係数が10943/8207kN/mである108cm幅の布
・151,000MPaの弾性係数を有する76mm径のエッジケーブル
・165,000MPaの弾性係数を有し、1080mmおきに張られた25mm径のネットケーブル
・一様に分布する1.9kPaの重力

Conclusions
固定された梁のエッジ、および、フレキシブルなケーブルエッジを有するそれぞれの構造物に対して、3つのsag/span比、ケーブルネットと膜、のそれぞれのケースに対して得られた結果をFig.9、および、Fig.10に示す。図中には最大応力に対するプレストレスの%が示されている。
エッジ梁構造物とエッジケーブル構造物を比較すると、あまり大きな差はない。エッジ梁を有するケーブルネットに対して、全ての弦がゆるまないための要求プレストレス(グラフが正の値となるための%)は1:5のsag/span比に対して50%、1:10,1:15のsag/span比に対して40%である。エッジケーブル構造物の場合は、全てのsag/span比に対して40%である。凸なケーブルの平均応力は、個々のケーブルの応力よりもより現実的な安定の度合いの測定方法である。図は、平均の凸ケーブルの応力がまだ30%のプレストレスであることを示している。膜に対しては、要求プレストレスは、エッジ梁、エッジケーブルともに、1:5のsag/span比に対して40%、1:10,1:15のsag/span比に対して30%である。凸な膜の平均応力は、全てのsag/span比に対して30%以下のプレストレスとなっている。

(平成8年3月3日 西田明美 抄録)

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原題:The Importance of the Structural Concept in Bridge Design
訳題:橋梁デザインにおける構造計画の重要性について
著者:Christian Menn
著者所属:Prof. em. Chur. Switzerland
雑誌名:Conceptual Desing of Structures Vol.2 pp.653-662. 図6,表0
用語:
 原語:Conceptual Design
 日本語:構造計画

内容要旨:
概要
構造計画における様々な局面につて前半で述べ、後半では3つの橋の構造計画について述べる。

1.はじめに
全ての橋梁デザインで最も重要な設計目標は
1.安全性
2.機能性
3.経済性
4.美しさ
安全性と機能性は良く整備された基準に従うことで達成される。経済性と美しさは基準にのっておらず、基準の枠を超えたデザイン努力とエンジニアの技量により最適なバランスが達成される。
 個々の橋梁の設計上の要求は、立地条件、機能上の条件と種々の拘束条件からなる。構造計画は構造全体だけではなく、橋げたの断面形状やケーブル配置といった構造上重要なディテールにも関わってくる。
 安全性と機能性は基準に従う限り常に実現されるものであり、橋梁の設計プロジェクトの真価は経済性と美しさによってきまる。洗練された構造計算は各断面の寸法を決めるのには役立つが、プロジェクトの真価を左右するのは構造計画である。一般に、ほんの少数の構造計画のみが全ての条件を満たすことができるのであり、最良の構造計画には、多くの経験だけでなく、大胆さや創造力、イマジネーション、形に対するセンス等が必要である。
精確で信頼性のある構造計算方法が、静的にも動的にも、終局状態に至るまで行えるようになったおかげで、終局状態に至るまでの挙動を追うための、冗長ともいえる、複雑なプロセスが要求されるようになった。しかし、基本的なデザインの質はさして上がったとはいえない。肝心なのは経済性と美しさを決定づける構造計画なのである。
うんざりするような複雑な基準と計算のお陰で構造計画に十分な時間がかけられないことさえある。これ以上基準を複雑化させることは反生産的である。不適切な構造計画に対して複雑な計算を行うことはそもそもナンセンスである。

2.構造計画の方法と評価のしかた
全体計画であれ、詳細設計であれ、全ての構造計画は設計目標と条件をきちんと満たしているかどうか注意深く確認する必要がある。多くの場合、構造計画の自由度はほんのいくつかの設計要件により決まるのであり、これらの要件は後で変わったりしてはならないし、設計プロセスの初期から構造システムに反映されていなくてはならない。橋の寿命を考えた経済性の観点からは、構造計画そのものが安定した構造挙動と、高い耐久性を保証しているべきである。
力の流れはうまく処理されているべきで、大きな回り道をしないようにする。構造要素は多機能であり総合的に一体となったシステムであるとよい。3次元的な部材配置は応力低減に非常に役立つことがある。2次元的に考えるのは損で、解析が3次元解析であってもだめである。3次元的に考えた良好な構造システムは見た目にも新鮮なことがある。
耐久性は以下の項目を考慮することで高められる。
・アクセスしやすさ、可交換性、不静定次数
・結氷防止剤に対する保護
・コンクリート部の覆いを大きくする
・木部部材の欠損防止
・コンクリートの打設硬化時の条件を整える
・単純なコンクリート配合
・効果的排水
・少なく排水良好なエキスパンションジョイント
・鋼性の外装材とコンクリートの適切な接続
構造計画は芸術性を高める目的で見直されることもある。この場合の検討項目は
・空間的、時間的、環境との適合性
・透明感やスマートさを出して技術の可視化を行う
・構造システムを明確化して、統一感を出したり、断面形状を統一すること。
経済性と美しさのバランスを橋の寿命も考えて達成することはエンジニアの技量として大事なことであり、美しさにかけられるコストは最も安い設計を行った場合の20%増しが限度であろう。
美しさに問題のある場合、あるいは、同じような橋より20%以上費用がかかった場合も構造計画が不適切であったということである。この2点が新しい構造計画を評価する目安になると思われるが、コストと美しさの評価には第3者のアドバイザーに依頼することが良いだろう。

3.3つの橋の基本設計
3.1 Charles River Crossing, Boston, U.S.A.
 片側4車線と2本のランプで全10車線で220mスパンをかける。設計条件は
・川にピアを立てない
・梁成は最小にしたい
・南北両岸において別々のクリアランスの条件がある。
・北岸では道路は立体的に広がる。
・古い橋は新しい橋ができるまで使い続ける。
広い道路幅とスパン、梁成の制限が主な構造計画上の要素であった。
アーチ橋は美観上不適当で、タワー一つの斜張橋はタワー2つのものより不経済であった。下部がV字型上部がY字型の2タワーで反対称な断面の桁張りをもつ斜張橋となった。これにより
・タワーに生じる横曲げの低減
・ケーブルが古い橋の邪魔にならない
・北岸で梁のエッジをコンスタントに表現できる。
反対称の断面と変則的なケーブル配置で低コストで芸術性の高い橋となった。

3.2 Sunniberg Bridge, Klosters近郊, Switzerland
アルプスの谷間を横切る全長525m最高60mで、平面が曲率半径480mで弧を描く幅9mの橋。景観に配慮してスマートさ、エレガントさが重要となった。デッキ以上のタワーを低く押さえ、ケーブルはハープパターンとして、すっきりとさせた。梁部はスレンダーな補強の断面とした。通常の片持ち梁形式の橋より15%のコストアップであった。

3.3 3000mスパンの橋の構造設計
6車線2軌道線路でスパン3000mの橋のスタディである。水平方向の剛制と動的挙動が問題であり、工期短縮も考えあわせた。
 3000mは吊り橋しかないが従来の吊り橋では、タワー、ケーブル、橋梁の順に完成していかなくてはならない。また、水平方向の剛性は橋梁部の幅を必要以上に広くしてしまう。
 以上の欠点を補うために吊り橋と斜張橋のハイブリッドの新しい橋が提案された。A型のタワー頂部をメインケーブルが渡り、傾いたステーケーブルが側面に張り出した腕部に張り渡される。3次元的効果によって橋梁の動的性状は不要なデッキ幅の拡張なく改善される。橋梁部は腕部の建設とともに同時に進められ、主吊りケーブルが完成した時点でステーで支えられた橋梁部も完成する。これにより工期も大幅に短縮することができる。
 この3次元的発想は従来の吊り橋の外挿として考えられるものより、特に剛性と工期の点でより効果的である。芸術性もあり将来の方向性を示している。

4.まとめ
ここにしめした3案は従来のシステムの外捜として得られる解答より、より効果的でかつ美しい。3次元的効果と総合的な構造効果を利用することが重要で、部分と全体の統合されたシステムを目指すことがとりわけ重要である。

(平成9年5月9日 川口 健一 抄録)

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原題:STRUCTUAL CONCEPTS BY OPTIMIZATION
訳題:最適化による構造概念

著者:K.-U. Bletzinger, K. Maute, E. Ramm
著者所属:University of Stuttgart, Germany
出典:Conceptual Design of Structures Vol.I, Proceedings of IASS Int. Symp. Oct. 7-11, 1996, Stutgart. pp. 169-177

概要:
 本論文は、概念設計における最適化のはたす役割を理解することを目的として、位相最適化、形状最適化の具体的事例を紹介したものである。
一般的に最適化問題は、ある制約条件のもとで目的関数が最大あるいは最小になるときの設計変数を探索する問題である。構造物を最適化する構造最適化問題は、i)位相、ii)形状、iii)寸法を最適化する三つのレベルに分類することができる。i)は概念設計時に重要となるものである。また、i)とii)は合わせて「一般化形状最適問題」とよばれ、現在さかんに研究開発がおこなわれている分野である。iii)は与えられた構造物の最終的な詳細部を決定するもので、かなり発展した分野である。本論文では、i)とii)の一般化形状最適問題の具体的事例を、位相最適化の事例であるa)基本的配置の生成とb)RC造の位相最適化、形状最適化の事例であるc)自由形態シェルとd)膜構造物の形状決定の合計四つに分類して紹介している。
a)の基本的配置の生成の2次元モデルの事例として、構造最適化で参照問題とされる箱ーはり格子(Figure 2)問題を、アダプティブ最適化法により解析したものを挙げている。これは外枠の存在と支持・荷重条件のみを制約をし、総質量を最小にする位相を求めるものである。三種類の荷重条件(集中、等分布、5箇所の集中荷重の組合せ)に対する最適化の結果、質量を25%まで低減できた。また、3次元モデルの例として、載荷点の最大変位を制約して自重を最小にするシェルの位相最適化(Figure 5)を挙げている。
b)のRC造の位相最適化について、圧縮材と引張り材モデルによりフレームの隅部(Figure 7)と壁の位相最適化(Figure 8)をおこなったものである。
c)の自由形態シェルの解析には、FEMとCAGD(Computer Aided Graphic Design)、最新の最適化解析手法が融合して用いられる。シェルの形状は、コントロールノードの位置と補間関数によって定義される設計要素で定義され、前者が設計変数となる。そして、CAGDを利用することにより、少数の設計変数でシェルの端部および表面の形状を明確に表現することができる。この分野の事例として、幾何学的非線形性と初期不整を考慮したうえで座屈荷重を最大とするシェルの形状最適化の例をFigure 12に示している。
d)の膜やケーブルネットの形状決定問題は、構造最適化問題の分野において成功した有名な適応例である。この分野には、あたえられた応力状態のもとで釣合い形状を求める問題と、数値的手法によってのみ解析可能な極小曲面を求めるものがある。これらの問題は、有限要素分割とNewton Raphson法を基礎とする強力かつ有効な解析手法が開発されている。形状決定問題により得られた膜構造の形状をFigure 13に説明している。
構造最適化問題、特に位相・形状最適化問題は、構造設計案が生成される概念設計段階における理想的ツールである。たとえ詳細設計において直接に利用されなくとも、構造のメカニカルな性質に対して有用で意義ある知見を提供すると締めくくっている。
(1997年1月20日 清水建設(株)和泉研究室 瀧諭)

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原題:SHAPING STRUCTURES FOR LEAST-WEIGHT
訳題:最小重量の形状構造物

著者:W. Zalewski, St. Kus
著者所属:Massachussets Institute of Technology, USA
Rzeszow University of Technology, Poland
出典:Conceptual Design of Structures Vol.I, Proceedings of IASS Int. Symp. Oct. 7-11, 1996, Stutgart. pp. 376-383

概要:
 トラス梁に作用する応力が全部材で許容応力度に達すると制約したとき、部材の総体積(重量)が最小となるような形態(位相)を求める最適問題を紹介した論文である。
強度を考慮する形状最適問題は、本論文で採用する二つの方法により非常に興味深くかつ実用的な結論を得ることができる。その方法の一つは、1950年代はじめに第一著者(Zalewski)によって定式化され、以後ポーランドで詳細に研究された"Constant Force Principal"である。これは他国では"Strut and Tie Model"として知られているものである。他の一つは、ひずみエネルギー最小化や力の流れ(主応力線)を基に体積最小な形態を求めようとする方法である。
 Fig 1は"Constant Force Principal(以下、CFPモデルとよぶ)の原理を示したものであり、アーチ(圧縮材)と吊り構造(引張り材)によって力を伝達している。この構造システムは支持点での水平反力を処理することができ、これを応用した屋根架構システムがポーランドで実現されている。Fig 8は連続体の梁の主応力線のアナロジーを基に得られる離散的な構造物の形態(以下、min ENモデルとよぶ)の原理を示したものである。
 以下に、CFPモデルとmin ENモデルを用いて最適問題の解析例を紹介する。ここで扱う問題は、全部材が許容応力度に達しているとしたうえで(制約条件)、目的関数である体積が最小となる部材の断面積と長さ(設計変数)を求めるものである。このとき、大きな力が作用する部材は断面積も大きくなる。なお、許容応力度には引張りも圧縮も同じ値を想定している。
 Fig 5は、等分布荷重qが作用する単純支持梁(梁せい:d、スパン長:10d)の、形態(位相)の違いによる体積の差を比較したものである。図中、a)は連続体の梁、b)〜f)はトラス梁であり、e)がmin ENモデルに、f)がCFPモデルに対応する。各ケースの体積Vは、
  V=a G L/f
で評価されている。ここにL、fはスパン長、応力であり、aは体積係数である。また、Gは総荷重であり
  G=q L
で表される。Fig.5の体積係数aを比較すると、連続体梁a)の主応力線を基に位相を決めたmin ENモデル(
図中e))がa=2.20であり体積最小、すなわち最適形状であることがわかる。
 Fig 9はFig 5と同様な梁に対し、中央部に集中荷重が作用する場合の変位yおよび体積Vを比較したものである。yはy=w L f/Eで評価される。ここに、wおよびEは変位係数、ヤング定数である。図中、a)〜f)はトラス梁、g)は連続体の梁であり、a)がCFPモデルを、f)がmin ENモデルに対応している。同図よりVはf)が最小に、またyもトラス梁の中ではf)が最小になっていることがわかる。すなわちf)が最適形状である。
 同様にFig 10は、片持梁(梁せい:d、スパン長:6d)に集中荷重が作用するときの体積と変位を比較したものである。図中a)〜e)は梁せいに制約をあたえたもの、f)〜g)はあたえないものである。図よりa)〜e)の中ではd)が、また全ケースの中ではg)が最適な形態であることがわかる。ここでg)はMichell Trussとよばれる梁である。Fig 10でのCFPモデルであるa)とmin ENモデルであるg)について、スパン長/梁せいの比率L/d(Fig 10では6)を変化させたときの総体積を示したものがFig 12である。これより、トラス梁の体積はCFPモデルではL/dに比例して大きくなるのに対し、min ENでは(L/d)ウ8で一定となることがわかる。これは、著者が提案したCFPモデルよりもmin ENモデルの方が合理的な形態であることを示唆している。
 Fig.10と同様にして、高層ビルに風が作用する場合の最適形状はFig.13のようになる(右側が総体積最小)。以上の考察より、風力や地震力を受ける高層ビルの骨組にはFig 14にあるつぼみのような形状が有利であると述べている。
(1997年3月13日 清水建設(株)和泉研究室 瀧諭)

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分類: シェル 原題: MEMBRANE/GLAZING ROOFSYSTEM-INTEGRATION IN A GENERAL BUILDING DESIGN CONCEPT
訳題: 一般的な建築物設計概念における、膜とガラスルーフの統合システムについて
著者: M.Kiefer 所属: IPL Ingenieurplanung Leichtbau GmbH, Rodolfzell, Germany
雑誌名:Conceptual Design of Structures Vol.I I, Proceedings of IASS Int. Symp. Oct. 7-11,1996, Stutgart, pp861-867

 LuxembourgのKirchbergにおいて、金融行政地区の中心にある、New Forum Kirchbergと名 付けられた、4階まで吹き抜けた巨大な屋内商業施設(ショッピングモール)が計画された。 この建築計画において、環境を生かしたコンセプトを満たす必要があった。そして、その達成 のために、単層で、膜面とガラス面を組み合わせるという、新しい屋根システムが模索された。 この施設の主な計画的要求は、以下の3点である。

1 一番低いフロアーへの明るさの確保と、内部にあるオフィスへの自然光の確保。
2 夏季における温度上昇の抑制。
3 冬季における温度低下の抑制。

 膜構造採用の理由は、その半透明性と、熱貫流性にある。たが、ここで問題になったのは、 施工でのガラス面との接続であった。
設備計算により、屋根面の投影面積の30-40%を占める膜面の配置効果は下記の通りである。

1 夏の最も暑い時期でさえ、内部温度は外気温度を越えることがない。
2 内部にあるオフィスにおいて、十分な自然光を確保できる。

膜面の鞍型部分の建設は、モールの長辺方向への交差空間を開放的なものにし、両端の柱に より天井窓枠は最高点に達している。建物の高さに関して、2つの条件が重要になった。一つ は低い高さという確認申請時の要求、一つは十分な高さを有すという建築的必要性があり、そ れゆえ屋根は小さすぎるという印象がないようにしなければならない。境界での最高点が移動 することにより、その両方の外観が考え出された。
ガラスの施工は、剛接合された2本の鋼管からなる構造体の間に、膜面の鞍型部分間で、近 似の必要条件に当てはめ、それにより発生した境界条件にしたがった。また、上部の樽型の形 状は、内部空間に傾いたアーチ材から生じた。
 これらの条件より、建築家の同意と、構造解析により建築計画は決定した。梁の周辺の高い 圧縮応力を軽減し、天井の施工で接触箇所の低減をした。その結果、膜施工用の柱が建設ラス ターに立ち、そしてガラス支承部も同様となった。柱の下駄履きアーチスパンケーブルの牽引 力は、境界ケーブルがガラス工事の支承位置へと導く間に、下部のパネルに反力を取っている。 ガラス面から、膜要素が天井工事において両サイドに定着される結果となった。建物の変形量 も、解析されなければならなかった。これは、支承部位置の建設をより難しくさせたのである。 そして、非対称荷重により曲げモーメントが、より大きくなってしまった。
ガラス工事による建物の影響を避けるため、我々は初期に計画されたプリテンションを諦め、 ピン接合されたシェルを建設しなければならなかった。
膜材下部の傾斜切り妻部分について、3つの長所があげられる。

1 切り妻の枠で区切った光の漏れにより、膜面に対する面積の占める割合が多くなる。
2 長辺方向で膜面を取り除くことにより、応力集中をなくす。
3 膜建造物の高さを抑える。

膜面部分の影響のもとで、建築家は、平面的に円形状に拡張された中心部分の計画を採用し た。この決定は、屋根全体の意匠を、この中心部分で統一した。円形状の内部の径と、その支 承の必要は、シェル形状の構造物を決定することになった。中心部分は、2つの楕円で成り立 ち、中央で弓なりに曲げられたラチス平面で構成されている。膜材とガラスの変更に引き続き、 膜が定着されている鉄骨の建設により、ガラス部分を接続した。アーチ材の配置は、膜面の2 次曲面部分に生じた。
 結局、計画は無事終了した。屋根は、内外両面に重要な建築的表現を見い出すのである。し かしながら、それは当初から意識して作り出されたわけではなかったのである。

(平成9年7月7日 兼清典彦 抄録)

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